建築設計デザイン科2年1組

齋藤 優介

設計するプログラムは、アーティストインレジデンスです。敷地は石川県輪島市にある黒島地区というところで、有名な輪島の朝市から車で30分程のところに位置しています。テーマは、有るもので無いものを作る、ということをキーワードに考えました。過疎な地域を利点と捉えて、静かに自分と向き合いながら創作活動ができる。また、黒島の建築の要素を抽出し、アーティストインレジデンスに合わせて変換しながら設計をしていく。そのようにして、黒島にあるもので、新しい黒島の風景ができないかと考えました。パブリックとレジデンスをちらばらせたことで、住人と住人以外のアプローチが、図面の青く塗られている数メートル程の動線で混じり合います。こうして、廊下をめぐるように前室、ギャラリー、スタジオ等にアクセスし、違った目的の人同士がすれ違い、ご近所付き合いをする様な、風通しがいい環境を設計しています。また、大きいボリュームを持つ空間として、資料室兼ギャラリーは観光寄りの部屋とし、黒島の町並みを眺められる西側に配置しています。集会所兼パフォーマンススペースは北側に配置して、室内の空間と、その手前に溜まれるような屋外の余白のスペースを計画しています。その他には、交流の中心的な機能として、パブリックの中央付近に共同ダイニングを配置したり、かつては塩漬けした魚を保管していた蔵をギャラリーに変換したりして配置しています。レジデンスは1階にあり、赤い矢印の部分をミセノマとして、外に対して開けるように配置しています。ミセノマは、住んでる人の判断で開けたり閉めたりできますが、中の活動が垣間見える場所として、交流のきっかけとなることを考えています。2階には、プライベートな部屋と、吹抜け部分に望楼の間を配置しました。望楼の間は船を迎えるのではなく、地域の人や観光客を迎える空間として捉えなおし、1階の気配を感じられるような位置に配置しています。芸術を通して人と人や、地域や世界を繋ぐ、市民やサポーターの努力を感じ、ここの地域を盛り上げる一端になればと、このプログラムを卒業設計に決めました。そんな中、1月にあった地震により能登地方で大きな被害がありました。芸術祭へ行った事がきっかけで、私もそういった被災地へ心を寄せている一人です。今回の卒業設計を通して、行先が不透明な今だからこそ、建築を通し、人と人とが繋がりやすい地域をつくる事が大切だと強く感じました。

ギャラリー

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