2025年度 建築学部 卒業制作 最優秀賞

建築設計デザイン科 小林奈央

本提案は、地元・埼玉県越谷市において、市民が日常的に選び続けてきた細い路地=「潜在街路」に着目し、市役所を再編成する計画とした。
敷地は駅から学校・病院・公民館などの社会インフラを結ぶ結節点に位置し、住宅地と大通りに挟まれている。車中心の幹線道路によって分断された動線に対し、人々は安全で身体的に心地よい路地を通ることで、独自の生活動線を形成してきた。その潜在街路の線を敷地内に引き込み、平面動線として再構成した。さらに、路には部分的に「節」を挿入し、相談室やギャラリー、小さな広場などの機能を重ねることで、行政空間と市民の居場所を連続させている。子ども、高齢者、働き世代それぞれの動線分布を分析し、部署配置と重ね合わせることで、通過の中で自然な出会いが生まれる構成とした。庁舎に目的をもって「入る」のではなく、日常の延長として通り抜ける中で関わることのできる構造である。潜在街路に滞留の拠点を編み込むことで、孤立を受け止め、誰もが立ち止まれる公共空間を都市の中に配置する。これは、制度としての庁舎を、生活に寄り添う場へと編み直す試みである。

このページの先頭へ戻る