建築科2年1組
原 量子
私たちのほとんどは視覚優位で日常を
過ごし,音の世界に関して無意識にな
りがちである。そこで,演奏音に限ら
ず,自然の音などそこにあるありとあ
らゆる音を音の風景として捉える「サ
ウンドスケープ」の概念を建築に落と
し込み,” 音の世界を切り口に身体性
を取り戻す空間 ” の計画に挑戦した。
計画地は福岡市の中心部にある大濠・
舞鶴公園の一画である。公園そのもの
が広大なミュージアム空間となる構想
を掲げており,今回はその一端を担う
形で計画提案を行った。
本計画では演奏音などの意識的に音を
聞く空間を,従来の壁に囲まれた閉ざ
された空間ではなく,ある程度の音響
性能を確保しつつも,内外の境目のな
い開放的な空間とした。そして,その
周囲に音を集めたり拡散させる仕組み
を設けることで,普段無意識で聞く音
を意識の領域に持ち込むことを目指し
た。全体として,いつも意識の中にあ
る音と普段は無意識の中にある音が混
ざり合い,その場所その瞬間でしか得
られない特別な音空間を作り出す。
日常に埋もれている音に気づき,感じ
ることで,新たな発見もあるはずだ。
この空間で,人々が周囲の音環境に耳
をひらき,新たな思索が展開されるこ
とを願っている。