「未来古民家苑」
建築設計デザイン科 環境デザインコース 卒業設計
私たちが計画敷地に選んだ世田谷区成城学園駅南の次大夫掘(じだゆうぼり)公園には、民家園があります。民家園内には多数の古民家が存在していて、今回の設計で私たちはその「古民家」に着目しました。古民家の特徴は、現代と違い断熱材やエアコン、換気扇、水道などの設備がなかったことです。今と比べてとても不便ですが、古民家には昔の人たちが考えた自然エネルギーを最大限に活かすための知恵があります。
古民家の知恵を学んでいった結果、私たちは昔の古民家のような「環境に優しい持続可能な環境共生住宅」を作りたいと考えました。
しかし、現代では昔のような完全に機械に頼らない暮らしは、現実的ではありません。そこで私たちは、古民家をそのまま再現するのではなく、古民家の良さと現代の建築の良さを合わせもった「未来古民家」を作ることにしました。
そのような新しい「未来古民家」の建築を広めていくにあたり、比較となる昔の古民家がある次大夫掘公園という敷地は非常に適しています。訪れる人々は私たちの設計した「未来古民家苑」によって、未来古民家の建築の良さを知り体験することができます。
具体的には、敷地全体が「風」「雨」「水」などの工夫を多く取りいれた環境と共生した設計となっており、地域のコミュニティ施設となる「未来古民家館」、防災拠点となる「未来古民家広場」、未来古民家住み方のモデルとなる「未来古民家Ⅰ」、宿泊して未来古民家を体験する「未来古民家Ⅱ」など様々な施設を設計しました。
《環境的考慮》
未来古民家苑は、大きく三つの部分に分かれます。未来古民家館、未来古民家広場、未来古民家Ⅰと未来古民家Ⅱとなります。
苑内に、野川の水を引込み砂利石などで浄化し野川へ戻すよう、江戸初期にできた農業用水路を復元しました。
未来古民家館は、地域のコミュニティ施設や防災拠点となる文化会館。屋上に降った雨を基礎部分の水槽に一時貯留し流出抑制を図ります。屋上に芝生を、壁面には蔦を這わせることにより、雨水排水を遅延させています。屋上緑化、壁面緑化により夏の冷房負荷軽減に効果が期待できます。
未来古民家広場は、地下に雨水貯留槽を設け、野川の治水対策、田畑への散水や中水としての利水、水路を利用した親水を役割としています。通年吹く南風をエネルギーとして、3基の風車の発電によりポンプの動力を確保しています。
未来古民家ⅠとⅡは、計画敷地の南側に隣接する民家園の古民家の良いところと、現代住居の良いところを融合させた建物となっています。南側に縁側を配置し、庇を太陽入射角に合わせ夏は日射を防ぎ、冬は日射を積極的に建物内に取り入れます。2階の床を、すのこ床として、風の通り道を確保しています。夏の南風を活用して、1階から2階屋根の通風口に吹き抜けるようになっています。また、敷地内に復元した川の水を床下チューブに通し、室内を冷却します。冬は、すのこに敷物を敷き対応します。屋根に降った雨は、井戸に蓄え、植物の潅水や井戸汲み体験を出来るようにしています。
以上のように、持続可能な環境共生住宅を考慮した「未来古民家」を提案します。