この課題の敷地である代官山は、多くの人が「おしゃれ」「都会的」「閑静な」といったイメージを持つ街である。このイメージは1969年から1998年までの約30年の歳月をかけて槇文彦という一人の建築家と同じ施主によって建築された「ヒルサイドテラス」によって造り上げられたといっても過言ではない。敷地はこの代官山の象徴とも言うべき「ヒルサイドテラス」の一群が建つ旧山手通りから、僅か50メートル程北へ入った場所である。現在は数棟の商業施設(店舗)が建っているが、ここをひとまとまりの土地として新たな建築を計画する。メイン道路に面してはほぼ完全に商業化されていながら、それでも一歩裏の通りに入ると、そこには住宅地としての顔も併せ持っている。つまり、この地域は「店舗」と「住宅」という、相反する用途が混在した街であり、この一見、規則性のない雑多さがこの街の独特の雰囲気を醸しだし、魅力ともなっているのである。

そこで、本課題では「住宅」と「店舗」の新たな関係とバランスを再構築することをテーマとした。店舗は商業施設としての経済性や利便性などを維持しつつ、この土地で家族と暮らす住宅としての環境(日照・通風等の快適性、プライバシー・セキュリティーなど確保)の整備及びコミュニティーの新たな構築を提案する。

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